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第二章 再会は最悪で最低2

last update Last Updated: 2025-01-16 17:22:20

撮影する場所は、すごく近い距離なのに歩いて行かないなんて、どんだけVIPなんだ。

スタジオにつくと、メイクをはじめる。

何もしなくたってつるつるの肌なのにメイクをするとさらにキラキラとした感じになる。

その間に私と杉野マネージャーは、カメラマンやスタッフと最終的な打ち合わせをした。

メイク室の様子を見ながら私と杉野マネージャーは、ヒソヒソと話す。

「芸能人のわりに、対応いいな」

「え、はい。そうですね」

「ま、これから急に気分が変わるかもしれないから気をつけて対応して行こうな」

メイクが終わった。

「では、紫藤大樹さん入ります」

声を張り上げた杉野マネージャーの合図で、大くんが入ってきた。

髪の毛をふわりとさせて、白いYシャツの中に水色のランニングを着てジーンズというラフな格好なのに、眩しいほどオーラが出ている。

「よろしくお願いします」

大くんが大きな声でしっかりと挨拶をする。

「では早速セットペーパーの前に立っていただけますか?」

カメラマンさんは、我社の要望通り撮影を進めてくれる。

「杉野マネージャー、セットペーパーとはなんですか?」

「バック紙のことだよ」

「なるほど」

言われた通り、大くんは白いセットペーパーの上に立つと目つきが変わった。

真剣でスイッチが入ったようだ。

パシャカシャと――。

シャッターを切る音が響く。

クールな表情をしたり、ニコッと笑ったり、優しい表情を浮かべたり、器用に顔を動かす。

さすが、プロだ。

商品を持って決めポーズ。スプーンですくって食べて笑顔。

一コマずつ素晴らしい絵を残してくれる。

大くんの仕事現場をこんなふうに間近で見れるなんて、激レアだろうな。

全国のファンは羨ましがられるだろう。

「はい、以上になります」

カメラマンの声が響く。

写真をチェックすると、どれを使ってもいい出来栄えだ。

あっという間に仕事をこなす姿に、ただただ感心する。

「すげぇ」

杉野マネージャーは思わず声を漏らした。

時計を見るとまだ十二時になっていなかった。一時間も、早く終わったのだ。

「予定が狂うな……」

困っている杉野マネージャーの元に、大くんが近づいてくる。

「時間があるので早めに出発して、海辺でランチなんていかがでしょうか?」

間近で見ると、汗一つかいてない。涼しい顔を浮かべている。

「そうですね。少し休んでいただけますね」

「一緒にランチ
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    美羽side結婚パーティーを無事に終えることができ、私は心から安心していた。 私と大くんが夫婦になったということをたくさんの人が祝ってくれたのが、嬉しくて ありがたくてたまらなかった。 しかし私が大くんと結婚したことで、傷ついてしまったファンがいるのも事実だ。 アイドルとしては、芸能生活を続けていくのはかなり厳しいだろう。 覚悟はしていたのに本当に私がそばにいていいのかと悩んでしまう時もある。 そんな時は大きくなってきたお腹を撫でて、私と大くんが選んだ道は間違っていないと思うようにしていた。自分で自分を肯定しなければ気持ちがおかしくなってしまいそうになる。 あまり落ち込まないようにしよう。 大くんは、仕事が立て込んでいて帰ってくるのが遅いみたい。 食事は、軽めのものを用意しておいた。 入浴も終えてソファーで休んでいたが時計は二十三時。 いつも帰りが遅いので平気。 私と大くんは再会するまでの間、会えていない期間があった。 これに比べると今は必ず帰ってくるので、幸せな状況だと感で胸がいっぱいだ。 今日は産婦人科に行ってきて赤ちゃんの性別がはっきりわかったので、伝えようと思っている。手作りのケーキを作ってフルーツの中身で伝えるというささやかなイベントをしようと思った。でも仕事で疲れているところにそんなことをしたら迷惑かな。 でも大事なことなので特別な時間にしたい。

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    「そんな簡単な問題じゃないと思う。もっと冷静になって考えなさい」強い口調で言われたので思わず大澤社長を睨んでしまう。すると大澤社長は呆れたように大きなため息をついた。「あなたの気の強さはわかるけど、落ち着いて考えないといけないのよ。大人なんだからね」「ああ、わかってる」「芸能人だから考えがずれているって思われたら、困るでしょう」本当に困った子というような感じでアルコールを流し込んでいる。社長にとっては俺たちはずっと子供のような存在なのかもしれない。大事に思ってくれているからこそ厳しい言葉をかけてくれているのだろう。「……メンバーで話し合いをしたいと思う。その上でどうするか決めていきたい」大澤社長は俺の真剣な言葉を聞いてじっと瞳を見つめてくる。「わかったわ。メンバーで話し合いをするまでに自分がこれからどうしていきたいか、自分に何ができるのかを考えてきなさい」「……ありがとうございます」俺はペコッと頭を下げた。「解散するにしても、ファンの皆さんが納得する形にしなければいけないのよ。ファンのおかげであなたたちはご飯を食べてこられたのだから。感謝を忘れてはいけないの」大澤社長の言葉が身にしみていた。彼女の言う通りだ。ファンがいたからこそ俺たちは成長しこうして食べていくことができた。音楽を聞いてくれている人たちに元気を届けたいと思いながら過ごしていたけれど、逆に俺たちが勇気や希望をもらえたりしてありがたい存在だった。そのファンたちを怒らせてしまう結果になるかもしれない。それでも俺は自分の人生を愛する人と過ごしていきたいと考えた。俺達COLORは、変わる時なのかもしれない……。

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